楽天VTIの運用報告書を徹底検証してみた〜約1.1%の下方乖離の謎に迫る

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こんにちは、ぽんくろです。

僕を含む一部のインデックス投資家にとっては長らくお待ちかねでしたが、楽天・全米株式インデックス・ファンド(以下、楽天VTI)の第1期運用報告書がついに先日公開されました。これを受けて、インデックス投資ブログ界隈では続々と分析レポートの記事が書かれています。

ただ、実質コストについては多くの記事で検証されていますが、ベンチマークからの下方乖離についてはあまり触れられていないように見受けられました。

そこで、当ブログでは実質コストだけでなくベンチマークからの下方乖離についても一歩踏み込んだ検証をしてみたいと思います。

まずは実質コスト

と言いつつも、まずは一番興味のある実質コストについて見ていきたいと思います。次の図は運用報告書に載ってある1万口当たりの費用明細です。

ここでトータルコストは合計の欄を見ると0.203%となっています。このときに注意が必要なのは対象期間が1年間では無いという点です。

明細に書かれている期間を確認すると2017年9月29日〜2018年7月17日となっているため、真のトータルコストを導き出すためには1年間に換算する必要があります。

もともと目論見書で謳われていた当ファンドの信託報酬は年間で0.1296%(税込)となっていたため、上図の(a) 信託報酬=0.097%という数字を用いて年率換算したいと思います。

0.203% × (0.1296% / 0.097%) = 0.2712%

ただし、これにはバンガード側のETF経費率である0.04%が外数となっているため、実質コストを計算するには上記に加えてやる必要があります。

0.2712% + 0.04% = 0.3112%

つまり、楽天VTIの実質コストの内訳を整理すると以下のようになります。

信託報酬 ETF経費率 隠れコスト 合計
楽天VTIの経費 0.1296% 0.040% 0.1414% 0.3112%

この数値は当初謳われていたトータルコストの0.1696%と比べると2倍近くになっています。しかし、今すぐ解約すべきってほどに悪いわけではないため、個人的には今後の運用で改善されていくことを期待してしばらくは様子見かなと思っています。

実はベンチマークから大きく下方乖離していた

実質コストが分かってめでたしめでたしとしたいところですが、実はベンチマークと比べると実質コストだけでは説明できない大きな下方乖離が起きています。

運用報告書によると、ベンチマークとの比較については次のように書かれています。

以下のグラフは、当ファンドの基準価額(分配金込み)とベンチマークの騰落率の対比です。当期の基準価額の騰落率は+11.6%と上昇し、ベンチマーク比では△1.1%となりました。

つまり、さきほど検証した約0.3%の実質コストだけではこの下方乖離は説明しきれないことになります。運用報告書では続けて次のように書かれています。

主な差異要因としては、マザーファンドにおける継続的な資金流出入に伴う投資先ETFの売買執行コストの積み重なりや投資先ETFからの分配金に対する課税、当ファンドにおける信託報酬等の要因が挙げられます。

この中で「当ファンドにおける信託報酬」の部分は経費明細にある信託報酬の0.097%を指していると考えられます。

また、「投資先ETFからの分配金に対する課税」については米国での源泉課税10%のことを指していると思われます。今回の運用期間内にVTIからの分配金が3回発生しており、そこに対して米国における課税が10%かかってきます。3回を合わせると約1.3%の分配金利回りになることから、約0.13%は課税によるロスと考えられます。

それでは「マザーファンドにおける継続的な資金流出入に伴う投資先ETFの売買執行コストの積み重なり」とはどういうことでしょうか?

経費明細にある売買委託手数料0.077%のことを指しているとすれば、上記の差異を合わせてもトータルで△1.1%もの乖離には全然届きません。

次からはこの△1.1%の乖離についてさらに詳しく検証していきたいと思います。

約0.75%の乖離は設定当初の2日間で発生していた

まずは、下方乖離がどのように発生していたのかを検証するため、次の方法で調査を行いました。

  1. 日々の米国VTIの終値と為替レートをもとに円建てVTIの理論価格を算出する。
  2. 楽天VTIの実際の基準価格を上記の理論価格と比較して乖離率を求める。
  3. 理論価格からの乖離率の推移をプロットしてみる。

なお、このような手順で求めた乖離率は運用報告書にある△1.1%よりも大きくなってしまいました。ベンチマークそのものの真の値が分からないため、ひとまずはこの乖離率を用いて分析していきたいと思います。

上記手順で求めた乖離率の推移を確認してみた結果、下方乖離のうち約0.75%についてはファンド設定当初の2日間で発生していたことが分かりました。これは設定当初の純資産が少ないために起こったイレギュラーであったと考えられます。

それ以後は乖離率の減少速度は少しづつ緩やかになってはいますが、運用報告書の経費明細にある0.203%に相当する減少速度と比べると実際の乖離速度はかなり大きかった模様です。

下方乖離の主な原因は新規流入による影響か?

そこで、仮説として「新規流入分についてはVTIの前日終値と当日始値の間のギャップを取りこぼしているのではないか」と思い検証してみることにしました。

新規の資金分については当日のマーケットが開いてからしか買い付けできないため、寄り付きの時点で開いていたギャップは取りこぼすはずだからです。対象期間でベンチマークは上昇しているため、このギャップ部分を取りこぼすと下方乖離が起きると考えられます。

この仮説を検証するため、次の方法で下方乖離の推定値を求めてみました。

  1. 日々の純資産額の推移データを元に新規流入額を求める。
  2. 純資産全体に占める新規流入資金の割合を求める。
  3. 上記割合だけ「当日始値〜当日終値」で計算した上昇率に補正した理論価格を求める。
  4. 「生の理論価格」と「補正した理論価格」の乖離率を求める。

このようにして求めた下方乖離の推定値を実際の乖離と比べてみたのが次の図です。なお、イレギュラーと思われる設定当初2日間については外しています。

実際の乖離率とずれてはいますがグラフの形状としては概ね似たような曲線を描いていることが分かります。実際にマザーファンドがどのような方法でVTIを購入しているか分からないので推測にすぎませんが、おそらく下方乖離はこれが原因だと思われます。

つまり、運用報告書の中に書かれていた「マザーファンドにおける継続的な資金流出入に伴う投資先ETFの売買執行コストの積み重なり」とは、単純に売買時の手数料というわけではなく、マーケット時間外におけるプライスギャップの取りこぼしのことも含まれていると考えられます。

第2期以降はどうなるか

それじゃあ今後はどうなるのかと言われると、僕としては「これからは大丈夫な可能性が高い」と考えています。これは実際に下方乖離の速度が緩やかになっていることからも明らかです。

第1期の運用期間においても後半については日々の新規流入金額の割合はファンドの純資産全体の1%未満になってきています。

足元ではファンドの純資産が220億円以上の規模に成長しているため、継続的に月間20億円程度の流入があるとしても1営業日あたりで言えば新規資金は全体の0.5%未満です。

したがって、今後については当記事の最初で求めた実質コスト0.3112%に近い数字に収束していく可能性が高いのではないかと推測しています。