こんにちは、ぽんくろです。
前回の記事では米国ETFと投資信託でそれぞれ積立投資をした場合のシミュレーションを行い、両者のパフォーマンスを比較してみましたが、今回はその続きの記事になります。
前回の比較はあくまでも理論上の計算でシミュレーションした結果ですが、現実の運用においては当然ながらその通りにいくわけではありません。
例えば、長期的には右肩上がりと言っても株式のボラティリティは大きいため、実際には上下にジグザグと動いた値動きのチャートを描くことになります。また、ETFは最低売買単位以下では買えないため、用意した資金をぴったり使い切れるわけではありません。
そこで、今回は現実の値動きを加味したシミュレーションをやってみようと思います。
現実を加味したシミュレーションをしてみる
シミュレーションの前に
とは言っても、未来のことは誰にも分かりません。なので、過去の実際の値動きを使って現実的な運用の場合にどうなるかを検証することとします。
VTIは2001年5月24日が設定日となっており、これまでに17年以上もの運用実績があります。ですが、できるだけ長期のシミュレーションを行いたいため、今回はVTIの代わりに1993年1月22日に設定された最古のETFである SPYを使用して検証 したいと思います。
SPYはS&P500指数をベンチマークとしたETFであり、米国市場全体を対象とするVTIとは若干性質が異なります。しかし、S&P500は米国株式時価総額の約80%を占めており、両者の動きは似通っていることが知られています。
直近5年間における両者のリターンを比較したものが以下のチャートになります。

Google Financeより
それでは、次の段落から実際にシミュレーションをしていきたいと思います。
前提条件
まず、今回の検証条件として以下のような設定で行うこととします。前回から変わっている部分に黄色でマーカーを入れています。
説明 | |
---|---|
投資金額 | 毎月150,000円 |
リターン | SPYの過去の実績リターンをVTIの代用値とする (価格・分配金はSPYの実績値をそのまま使用) |
為替レート | 日本銀行のサイトより取得した過去の実績レートを使用 |
検証期間 | 1993年1月末から2018年8月末まで |
源泉課税(米国) | 10.00% |
国内課税 | 20.315% |
その他 | 分配金やポイント還元等は即座に再投資する。 ETFの購入口数は整数とし、残金は翌月に繰越す。 |
個別の条件については以下の通りです。信託報酬の部分以外は前回と同じです。現実には1993年時点では下記の条件は実現できませんが、それを言ったら今回の趣旨から外れるのでダメです。
米国VTI (ETF) | 楽天VTI (投信) | |
---|---|---|
証券会社 | SBI証券 | 楽天証券 |
購入方法 | ETF定期買付 ※外貨入金は手動 |
50,000円:積立購入 それ以上:通常購入 |
決済方法 | 外貨決済 | 50,000円:楽天カード それ以上:証券口座から |
為替手数料 | 1ドルあたり2銭 ※住信SBIの外貨積立 |
なし |
売買手数料 | 0.486%(税込) | なし |
信託報酬 | SPYの実績による | SPYに対して+0.271% (楽天側の実質コスト) |
分配金 | あり | なし ※ファンド内で再投資 |
ポイント還元 | なし | 楽天カード:1.0% 投信残高:0.048%(年率) |
外国税額控除 | 半額分だけ取り戻せる | なし |
ETFの信託報酬を0.04%にしていないのはSPYの実際の価格を使うためです。SPYの信託報酬は価格の中に織り込まれているため、それを0.04%に調整するのはとてつもなく面倒なのです。
なので、楽天側は実質コストの0.311%からVTI分の0.04%を除いた0.271%をSPY値動きに対して調整することで、信託報酬の差が前回と変わらないようにしています。
前回と違ってくるポイントは、相場の上げ下げがあるので下げ局面では複利効果が逆風になることと、ETF側は投資資金をきっちり使い切れないので機会損失が生じることです。
シミュレーション結果
上記の前提条件をもとにシミュレーションした結果は以下の通りです。前回は運用結果の表も載せましたが入力が面倒なので今回はいきなりリターン推移のグラフです。
2018年8月末の累計リターンはETF側が+215.86%に対し、楽天VTI側は+212.29%で最終的に3.57%の差がつきました。グラフ上ではわずかに緑のラインが下側にはみ出していますが、ほとんど重なっているように見えます。
損益率の差の推移は次の通りです。
リーマンショック期に緑のグラフが激しく動いているのは国内課税の影響によるものです。トータルリターンがマイナスに陥るような局面では売却時の課税が無くなるため、分配金が入った時点で課税されているETF側は払い損になります。
今回のシミュレーションでも緑のグラフは右肩下がりであるため、やはり0.271%の信託報酬の差は大きいようです。ただし、相場の上下動があるせいか前回のように加速度的に差が広がっていく感じにはなっていません。
もしも楽天VTIが期待値通りなら
前回と同様にもしも楽天VTIの信託報酬が期待通りの0.1696%(楽天側で0.1296%)だった場合にどうなるかもシミュレーションしてみました。
2018年8月末の累計リターンはETF側が+215.86%に対し、楽天VTI側は+219.07%でグラフで見ても最終的に緑色のラインが逆転しているのが見て取れます。
損益率の差の推移は次の通りです。
この前提条件においては緑のラインが0%よりも上にいる期間のほうが長く、楽天VTI側の勝ちと言っていいと思います。
今後、楽天VTIの運用が改善されて実質コストが0.20%を下回るようになってくれば、日本において米国ETFの直接購入はオワコン化するかもしれません。